ハトについて
鳴るセピア
スペースタンポン
ディストピアってほどでもないけどね、と可富は鹿波に言った。
ディストピアってほどでもないんだよね、と、鹿波も言った。
この街はディストピアっていうほどではないけれど、
*
月経期間にわざわざスポーツをする、そしてそれを競う、という、
その人生の半ばごろ、富士見は、面白都市をつくることに決めた。
性暴力が、ときどき起こった。トイレの個室で。あるいは、
無痴漢無強姦の達成までには、様々なことがあった。
富士見の狂気を手助けする人間は、いくらでも湧いてきた。身体。
いびつかもしれない。それでも、この街をどこまでも「
もう一つ、富士見が私財を投じた事業があった。
富士見がそう信じるに至った、「ある暴力事件」については、
残った問題は、月経だった。健康上の理由から、
生理がある人たちは、富士見に言った。この、
*
鹿波と可富は、無事、生理中に競技の日を迎えた。
「すごい人だね」富士見鹿波が言う。「すごい人だよ」
人工子宮から遅れること20年、
スタジアムは、選手の富士見たちでいっぱいだ。
一人ずつ、投擲位置につく。経血を吸って重くなったタンポンを、
競技用に開発されたタンポンは、驚くほどよく飛ぶ。
単なる血。どんな命の元にもならない経血が、
かつて、この競技が面白だった時代があった。
鹿波がタンポンを投げる番となった。
興奮冷めやらぬ中、
可富はグラウンドの上で大きく息を吸い、
今だ。
煌々と光る満月に向けて、可富は、タンポンを振り切った。
スポーツの祭典が終わった。心地よい疲れの中で、富士見たちは、
今の地球は、ユートピアってほどでもないけど、
みんなで待ち望んでみる。いつか、地球外の生物が、
ただの石のせいで死ぬ
虚無を飲む
ストゼロを飲みながらこの文章を書いています。
私は昼間、虚無に依存しています。
虚無とは、これ
です。
サントリーからだを想うオールフリーのことを「虚無」と呼び始めて、もうすぐ1年になるでしょうか。
虚無はアルコール0.00%、カロリーゼロ、糖類ゼロ、タンパク質ゼロ、脂質ゼロ、炭水化物ゼロの飲料です。
虚無は、私の腹を満たし、その実何の栄養素も与えず、かつ利尿作用により飲んだ分より多くの水分を絞りだします。
一日に虚無を6缶くらい消費していますが、虚無なので消費した気がしません。
本当は毎日虚無だけで過ごしたいのですが、今日みたいにやさぐれている日はストゼロを飲んでしまいます。しかも、会社からの帰り道。文字通りの道だけではありません。道&電車内です。電車内も帰り道です。
こうして虚無とストゼロを飲んで過ごす人生は、本当に虚無だなあと思います。
「鳥よ!」
随分昔に、「鳥よ!」という名前のブログをやっていたことがあります。なんでそんな名前になったのかを書いたら、だいぶ長くなってしまいました。
まず初めに、私はウサギを飼っていました。うさ原という名前の、グレーのミニレッキスで、私にとってはとても大事なウサギでした。ミニレッキスってわかりますか?レッキスの小さいやつです。レッキスってわかりますか?毛皮用のウサギです。私はうさ原を、ペットショップで、25000円で買いました。それを聞いた母親は、「レッキス3匹ぐらい使ったマフラーがセールで5000円で売ってたよ」と教えてくれました。そういえば母にはうさ原の容姿をさんざん面白がられましたが、そのときはうさ原が世界で一番かわいいウサギだと思っていたので全然意味がわかりませんでした。今になって写真を見ると、ウサギだけど相当馬面なタイプのウサギで、割と面白い顔をしてたんだなとわかります。私には子どもがいて、私にとっては結構かわいい顔をした子どもなのですが、たぶん後で写真を見返すと面白い顔してる感じなんだと思います。
彼を飼い始めた直後に、ブログを作りました。そのとき私はブログの名前を「月に帰るな」と名付けました。ご存じの通り、月にはウサギがいます。ウサギを飼っている人たち(通称うさ飼い)は、ウサギが死ぬことを「月に帰った」と言い慣わしていて(今でもそうなのかは、わかりません)、だから私は、ウサギの長寿を祈る気持ちをこめて「月に帰るな」と名付けました。ちょっと気持ち悪いですね。
その年の冬のことです。うさ原は床に落ちていた私の睡眠薬(そのときはハルシオンでした。関係ないですが、ハルシオンって、プリオシン海岸とハルジョオンに似ていますよね。カンダタとカンジダくらい似てるなあと思います、激似ってことです)を齧って飲み込んでしまい、入院してしまったのです。
洒落になりません。ブログタイトルが。
私は泣きながらブログのタイトルを変えました。「鳥よし」に。
近所にあった焼き鳥屋の名前です。悔恨で曇った目に看板の文字が飛び込んできたので、もうどうでもよくなってその名前にしてしまいました。ちなみに、割と老舗でしたが、こないだ通りかかったら、別の店になってました。なんだか寂しかったです。
幸い、うさ原は一命をとりとめました。入院費に12万円かかりましたが、うさ原の命と比べたら安いものです。
結局、4年しか生きなかったんですよね、うさ原。でも私にとってはとても濃厚な4年間でした。ありがとうねうさ原。
さて、「鳥よし」にしてしばらく経ちました。ふとアクセス解析を見てみると、なかなかの数「鳥よし」で検索して辿り着いちゃった人がいるんですよ。さあ、焼き鳥食べたいのに謎の駄文見せつけられる身にもなってみてくださいよ、なってみましたよ。ひどいもんでしたね、怒りに震えました。そこで、私はまたブログタイトルを変えようと決意しました。これ以上検索を邪魔するゴミになりたくなかったからです。
こうして私はブログを「鳥よ!」にしました。『鳩よ!』っていう文芸誌があったじゃないですか、昔。マガジンハウスから出てたやつ。そのパクリです。でも鳩より鳥全体に呼びかけたかった(そのときは)。
だから「鳥よ!」にして、そのまま7年くらい「鳥よ!」を続けて、子どもを産んで、子どもにブログばれしたら死ぬほど恥ずかしいなと思って消しました。
以上です。そんなに長くなかったや。
なんでこんなこと書いたかっていうと、あれですね、鳥が、ツイッターの鳥が、いなくなったからですね。
今、だから叫びたい。
「鳥よ!」