2023-12-30から1日間の記事一覧

金色の不同意(千字戦参加作品)

彼の音は、いつも開いていた。トランペットのファーストらしい華やかな音ではあったが、まるで浅いマウスピースを使っているようなぺらりとした音。彼が出した音だとすぐわかる。金色のBACHを使っていた。さらりさらりと高音を吹き流すが、どうしてもきらき…

梅からの伝言(千字戦参加作品)

その枝は、どちらに伸びるか決めかねていた。狭い庭に植えられた梅の木である。まだ若木で、その枝がどこを目指すかによって、木全体の大勢が変わってしまう、そんな時期であった。 あちらに行ったら塀があるが、でも日当たりはいい。そのころの枝にとって、…